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2010年 01月 06日
綿業会館(前編)
今回は、今年最初の記事で掲載した「綿業会館」についてアップします。
昨年10月に建物見学会に参加した際に撮影した写真です。いきなり前回記事と同じ写真で恐縮ですが…。

綿業会館(前編)_b0170881_1253072.jpg


綿業会館は、昭和初期に設立された日本綿業倶楽部が建設した建物で、昭和6年の竣工。
東洋紡績の専務だった岡常夫氏が当時の金額で100万円を寄付し、業界からの50万円の寄付と合わせて150万円の予算で建設した とのこと。
150万円といっても貨幣価値がピンとこないが、(よく聞く喩えで)同時期に建設された大阪城の復興天守閣がおよそ50万円と言われていることから、
この建物が大阪城天守閣の3倍にもなる破格の工事費で建設されたことになる。
また、当時日本の主要産業であった繊維・紡績業が、これほどの建物を作る力を有していたこともわかる。

設計は渡辺節。渡辺は以前掲載したダイビルの設計も手がけている。

綿業会館(前編)_b0170881_1263587.jpg

地上7階建の外観は、基壇部と中層部、頂部の三層構成。華美に走りすぎず、といって単調でもないところが秀逸だ。
中層部・頂部の外壁タイルは、スクラッチ面状のタイルを縦横に貼り分けることで、表情豊かな外観を生み出していると思う。
窓廻りの意匠も階ごとにアレンジが施されていて、単調にならないように配慮されている。
私は朝の通勤時に綿業会館の前をよく歩くが、季節・時間によっては朝の太陽光が斜めから射して、タイルの陰影が強調されて非常に美しい。
この写真で見えるタイルの色が一部くすんでいるのは、空襲による影響のようだ。
辺りが焼け野原になったなかでも綿業会館にはほとんど被害がなく、現在に至っている。

ちなみに、南側は備後町通、西側は三休橋筋というあまり大きくない通りに面している綿業会館なので、引きが取れなくて建物外観を撮影するのは難儀する。
(この時は外観をきちんと撮影していなかったので(ハナから撮影することを忘れていて…)、上に掲載した外観の写真は2年ほど前に撮影したものです)

1枚目の写真は正面玄関側から写したもので、この正面玄関を入ると、下の写真の通り、シャンデリアが吊るされた格天井の風除室がある。
会員制クラブハウスとしての建物の格式を雄弁に主張していると思う。
綿業会館(前編)_b0170881_1374332.jpg


風除室を抜けると吹抜けのホールに行き着く。迫力ある中央の像は、100万円を寄付した岡常夫氏の像。
綿業会館(前編)_b0170881_1392710.jpg


ホールに面する階段は中央に踊り場があり、空間形成にも大きく寄与する印象的な階段。
階段の上り口は上部にアーチが架かっていて、アーチをくぐって階段を上る際に、視界が開ける「抜け感」のようなものを感じる。
綿業会館(前編)_b0170881_145767.jpg


階段を上がりホールを見ると、中央のシャンデリアが際立って見える。
綿業会館(前編)_b0170881_1462161.jpg

壁と壁の間からシャンデリアの姿をとらえてみた。
綿業会館(前編)_b0170881_147334.jpg


(写真は EOS 30D + EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM, 2枚目のみEOS 30D + EF-S17-55mm F2.8 IS USM )

(後半へ続きます)

by photomoments | 2010-01-06 21:28 | 建物・街・風景 | Comments(2)
Commented by ゼク at 2010-01-07 20:54 x
この頃のもの作りへの情熱と言うものは現在とは比べ物にならないほど
凄かったと思います。パソコンもコンピューターも電子機器の全くない
時代に烏口で図面を引き、そこには情熱以外の何があったのだろうと
思います。
東洋のマンチャスタと呼ばれ御堂筋ができまさに大大阪と呼ばれた
時代ですので御堂筋にはたくさんの素晴らしい建築が残っていますね。

ダイビルが無くなってしまうので絶対に守っていかなければならない
ものだと思います!
Commented by photomoments at 2010-01-07 22:16
ゼクさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

今は設計図もCAD化されていて、非常に細かく、かつ正確に図面ができているのに対し、
手書きの時代の設計図は書かれた情報量も少なくて、図面だけを比較したら「え、この程度?」と思うことが多いです。
でも、出来上がる建物のクオリティはヒケを取らないですよね。
ものづくりのアプローチの仕方が昔と今では違うということでしょうか?

綿業会館は、守っていくべき価値のある建物だと本当に思います。
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